アウトドア日記

個人の日記を兼ねていますので、アウトドア以外の記述があります。

2006年11月17日(金)
読書感想 「米中石油戦争がはじまった」

「米中石油戦争がはじまった」
 アメリカを知らない中国は破れる
 日高義樹 著
 図書印刷株式会社 2006/03/20

中国が、経済の急激な発展にともなって、将来必要となる膨大なエネルギー源を確保するために奔走している。

将来の石油消費量
現在、世界の石油消費量は一日当たり8200万バーレルで、2025年には50%増の1億2500万バーレル/日になると予想されている。
米国の石油消費量は現在2000万バーレル/日で、25年後には2900万バーレル/日に達すると予測される。

中国は2004年に日本を抜いて世界第2位の石油消費国になり、現在の消費量は700万バーレル/日である。
中国がこのまま高度経済成長を続けていくと、GDPが5年で倍増し、楽観的な見方では2025年には4倍になる。
石油消費量も単純計算で2025年には4倍の2800万バーレル/日に増えることになり、中国はこの殆どを輸入しなければならない。

従って、中国は2025年頃には米国とほぼ同量の石油を、米国に対抗して確保しなければならない厳しい状況になる。そのころには現在の油田の採掘量は減少方向に向かっていると思われる。

米国の財政事情
米国経済は現在好調に見えるが、実際の内容は非常に悪い。
貿易の収支である経常収支と、国の家計簿に相当する財政収支がともに大幅な赤字を続けている。年間の経常収支の赤字額が2000年の4160億ドルから2005年には7900億ドル(推定)と増加を続けている。

経常収支が赤字になるのは、輸出よりも輸入の方が多いことが原因である。輸出で得る収入よりも輸入で支払う支出の方が多いのであるから、その差額の資金をどこかで調達しなければならない。米国内にはこれを賄える貯蓄など全くない。

開発途上国は外国から資金を借りて必要物資を輸入し、国の経済の発展によって貿易を増やし、その利益で借金を返している。これは良い借金である。

しかし、現在の米国は貿易黒字国に多額の米国債を買って貰ったり、同じく貿易黒字国に米国内に多額の投資をしてもらうことで、その不足資金を捻出している。
貿易黒字国から黒字分を米国に還流させて、経常収支の赤字を埋めているのに等しい。

個人に言い換えるならば、収入以上の贅沢をして、そのための不足資金をサラ金から継続して借り入れている状態で、今の財政事情では返済の目処は全くたたない。
そのため米国は現在世界最大の借金国となっている。これは悪い借金である。

最近の中国は貿易黒字が巨額に達している。現在米国内に多額の中国資金が流入して、米国の資金不足を補うのに一役かっている。
世界各国からは、「いつまでもこのような綱渡りは維持できない。」などの危機感も表示されている。

もし、米国債の所有国が米国債を大量に放出したり新たな購入を中止した場合、または各国が米国への投資を停止したりすれば、米国はたちまち資金の調達に行き詰まり、ドルは暴落することになる。
<参考文献> アメリカ経済の光と影(丸茂明則)

北京サミットについて
今月(2006/11)中国の北京で、中国とアフリカ48カ国の首脳らが参加した「中国・アフリカ協力フォーラム北京サミット」が開催された。

 中国は援助による政治関係の強化を基礎に、アフリカへの投資や貿易の増額を通じて、資源確保などを目的に経済関係の拡大を目指している。

アフリカ諸国側も中国からの援助や中国への資源輸出に加えて、自国の経済成長につながる中国からの投資を期待しているという。

 09年までの行動計画として、中国からの援助の倍増など具体策も決め、一連の会議を通じて、14項目・19億ドルの契約にも合意した。

参加国には人権問題や腐敗で知られる独裁国家も名をつらね、人権よりも資源囲い込みなど実利を重んじる中国外交の姿勢が明確に打ち出された。

 この中国の姿勢について、欧米などから批判がでていることについて、中国側は「誰が批判しているのか。アフリカは感謝している」と反論したと報じられた。

中国の石油依存体質について
中国は現在エネルギー源として石炭を66%使用しているが、公害を排除する技術の開発遅れなどで、大量の石炭の継続使用が困難な状況にある。
このまま石炭の消費量を増やしていくと、CO2の増加、公害の深刻化、酸性雨の増加による森林・農地の破壊など、深刻なダメージを受けることになる。

安くて公害の少ない天然ガスの利用が望ましいが、設備の導入が遅れて現在はその利用設備が非常に少ない
このため、中国は今後の必要エネルギー源の増加分を、石油に依存せざるをえない状況にある。

読書感想
本書では、中国が経済の急激な発展にともなって、将来必要となる膨大なエネルギー源を確保するために奔走していることで、米国との摩擦が生じていることに関連して、多方面からわかり易く解説している。
読者の立場としては、今後、米国と中国の力関係がどう推移していくのか、興味を掻き立てられた。

本書によれば、中国の手法はすさまじいの一言に尽きる。
中近東諸国に対しては、イランの核開発に反対する国連の介入に反対してイランを助け、代償として石油取引契約を結んだり、米国と関係の深かったサウジアラビアにも手を伸ばしている。その他の中東諸国にもいろいろと画策している。

また、米国の裏庭といわれ、米国の勢力範囲で外国は介入できない場所であった中南米諸国にまでも手を出し始めた

ベネズエラ、エクアドルなど、中南米のあらゆる腐敗した国々に資金を投下し、援助することによって石油を手にしようとしている。
もっとも中国としては腐敗した国々だけをターゲットにしたわけでなく、中南米のあらゆる国から石油を手に入れようとしているだけなのだろうと解説している。

アフリカ諸国にたいする姿勢も中近東・中南米と同様である。先の「北京サミット」に見られるとおりである。

本書によれば、
米国は、中国が将来の石油消費の増加を予測し、世界中でなりふり構わず石油をかき集める努力を開始したことに警戒感を持っている。また、中国が、確保した石油資源を、自国の消費用に囲い込むのではないかとも懸念している。

しかし、米国の指導者たちはいまのところ中国の経済力を必要としているため、中国の手法が米国をはじめ西側諸国とはまったく相容れないものであることに目をつぶっているとしている。

我が国では、米国に盲従した政策のため、イランのアザデガン油田(推定埋蔵量260億バレル)の新規石油採掘権が大幅に縮小されるなど、国家としての長期石油戦略に欠ける姿勢に不安を感じる。日本は両大国の熾烈な石油獲得競争に互して、石油を確保してゆけるのであろうか。

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