バリエーションコースとして鬼脇ルートを選択して、南峰・北峰経由で利尻山山頂に至り、鴛泊に下りました。
(19日)
テント発 04時46分
登山口 05時53分 (1時間07分)
テント泊 11時30分 (5時間37分) (6時間44分)
(20日)
テント発 05時34分
北峰 11時35分 (6時間01分)
利尻山 13時00分 (1時間25分)
キャンプ場 17時20分 (4時間20分) (11時間46分)
合計所要時間 12時間34分
(GPS記録)
総上昇量 m
総下降量 m
累積標高(+)トラック m
累積標高(+)地形 m
TP積算距離 km
(メモ)
GPS記録: 1日目 なし 2日目 あり
参加者 ガイド、Tさん、私 の3名
写真なし
(2013.11 追加)
利尻山の鬼脇コースは、上部の崩落が激しいため、7合目以上が登山禁止になっています。
登山当時も7合目以上が登山禁止であったが、プロの登山ガイド(日本山岳協会上級登攀ガイド)がバリエーションコースとして選択して、登山者の責任の上で登ったものです。
Tさんは女性ですが、経験豊富で、登攀技術はセミプロ級の腕前があり、体力・技量とも私をはるかに凌いでいます。
このため、全行程で私が2番手に入り、前後のサポートを受けながら登っています。
以下は、当時記録していた詳細な登山記録です。
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利尻山東稜(鬼脇ルート)
平成16年5月18日〜21日
ガイド Tさん 私 (計3名)
(装備)
急峻な登山路を、テント2泊の装備を各人が担ぐため、究極的な軽量化を要求された。
このため、私の装備は次のようにした。(登山靴を除いて13kg強)
・アウターは、雨具の上着を着用。(モンベルの最新の雨具を購入。雨具の携帯を削減するため)
・ズボンは、冬山用のものをそのまま使用。(洗濯・防水スプレーを実施)
・登山靴は、HANWAGのロッキーゴアテックスを購入。(防水目的と軽量化1060g/片足)
・食器は、紙製(5枚)とし、割り箸を使用。
・手袋は、夏用の完全防水式を2双購入。(インナー使用可)
・非常食は、チョコレート1箱とカロリーメイト1箱。
・ファーストエイドは、内容を縮小。
・予備下着は、靴下のみ。(下着類はカット)
・ユーティリティ(小物道具類)は、内容を縮小。
・カラビナ1個、安環1個、ATC1個、60cmロープスリング2個
・ヘルメット、ピッケル、ハーネス、12本爪アイゼン
・シュラフ(3シーズン用)、シュラフカバー、エアーマット(180cm)
・防寒着(ダウン製のインナー用上・下)
・水 1.5リットル (ペットボトル 3個)
・行動食 2食分 小型大福10個(500g)
・60リットルザック(2.6kg)
・その他全般にわたり軽量化する。
5月18日
札幌〜稚内〜利尻島鴛泊〜鬼脇〜林道入口(テント泊)
鴛泊からハイヤーで鬼脇の林道入口に進むが、林道入口に通行止めのバリケードがあり、中田組に通行の可否を聞きに行ったが、昨年より一般車両は通行禁止にしているとのことであった。
このため、林道入口で旅館に保管して貰う荷物をハイヤーの運転手に託した。
林道に入ってすぐの所にテントの張れる小さな空き地があり、整地のうえテントを設営した。
食事用の水は雪を溶かして作る予定であったため、私の持参した1リットルのポリ製水筒を利用して、すぐそばの小学校の水飲み場から水を数回調達した。
翌日、林道が途中までしか整地されておらず、雪の無い場所で工事車両による通行止めが判明したので、ハイヤーで無理矢理入っても水の無い所でテント泊をするはめになるところであった。従って林道入口でのテント泊は正解であった。
翌日は林道歩き(3km強)が追加されたため、03:30起床で早立ちすることにした。
5月19日
03:30 起床。天候は晴れており風も無く快適な朝であった。
04:46 テント場を出発。(標高35m)
05:53 登山口(林道から分岐。旧鬼脇コース入口)(標高285m)
ここまでは林道歩きのため至極順調。3km強を約1時間で歩いた。
ガイドの予定では、登山道に入らずにヤムナイ沢に続いている林道をそのまま行き、途中の雪のある斜面で旧登山路に出る予定であったが、雪が少ない様なので急斜面の藪こぎを懸念して、始めから旧登山路を進むことにする。
この鬼脇コースは、7合目までは登山が許可されている(7合目以上が禁止)はずであるが、頂上への登山禁止が永いせいか、登山者が少ないとみえて登山路への藪の被りがひどく、雪面歩行以外は藪こぎで苦労する。
途中、酷い藪こぎのため右足の太股裏側がツルが、直ちに休憩して漢方薬・カリカリ梅・ブドウ糖を補給する。幸いに短時間で回復したので登山を継続したが、今後に不安を覚えた。
結果的にはこの山行で足がつったのはこの1回のみであったが、これは、強風のため天候待ちを繰り返したのが良い休憩になったためと思われる。
上部に行くに従い風が強くなり、危険個所を通過するには危険すぎる強さになったため、途中で天候待ちを繰り返しながら、徐々に高度を稼ぐ。
途中、ヤムナイ沢でドーンという落石の音を聞く。まるで小さな雷がなっているような音であった。
11:30 標高1170mに到達する。
登山口からの3km強(標高差885m)を、5時間37分かけて歩いたことになる。
この場所以降は特に急峻でビバーク適地が無いため、一気に頂上まで通過しなければならない。
このため、慎重に天候判断をするが強風の収まる様子がみられず、携帯電話でネイチャーワールドの利尻山の天気予報を確認するが、風は夜に向けて更に強くなる予報であった。
やむなくこの地点でビバークする事に決め、稜線から1m程度下がった僅かな平地をテント場とした。
2〜3人用のテントの床面積に足りないため、山側を削り谷側に土盛りして、どうにかスペースを作る。
西風のため、稜線から下がったこの場所がちょうど風下となり、好都合であった。
ペグは持参しなかったが、ハイマツ(3箇所)とピッケル(1箇所)でロープを固定したので、一応強度的には十分で、夜間の強風にもよく耐えた。
私は山側に寝たが頭側が少し谷側に傾斜しており、決して快適な寝心地とは云えなかった。また、朝起きたら谷側に寝たガイドの足側の土盛り部分がかなり弛んで落ち込んでいた。
水は雪を溶かして十分に作ったので、食事(カレーライス)は良好であった。
(ハプニング)
・テント設営中にフレームを1本谷側に落とす。直下の雪原手前でかろうじて止まっていたので事なきを得たが、もし雪原(急な沢)に落ちていたら、数百メートルは落下したであろう。
幸運にただ感謝するのみ。(私が落としたのではない)
・テント入口の前はすぐきつい斜面でスペースが無いため、登山靴をテント入口のハイマツに固定していたが、何回目かの出入りのときに、靴を固定している最中に片側の靴を斜面に落としてしまった。幸い直下の僅かに生えていたハイマツに引っかかったので、事なきを得た。
幸運に感謝するのみであるが、一寸した操作ミス(油断)がとんでもない事故に直結することを身にしみて感じた。今後の戒めとしたい。
(エスケープルート)
頂上アックが不可能な場合は、往路を引き返すのは危険なため、ビバーク地点のすぐそばの沢を下りアフトロナマイ川に並行する林道(始点は七軒町)に脱出するとのことであった。
また、ビバーク地点から頂上寄りに進んだ場所から撤退する場合は、東北稜沿いのアフトロマナイ沢を下ることが可能とのことであるが、このルートは左右からの落石が多くて危険なため、最悪のときにのみの使用に限定する。
5月20日
03:30 起床。天候は曇りで悪くないが、風は相変わらず強い。
取り敢えず、食事(餅2個の雑煮)をして待機する。
05:34 ビバーク地点を出発。
風は依然として強いが、取り敢えず行けるところまで行くことにして出発する。始めは登山路を外して急な雪原を登り、一気に百数十メートル高度を稼ぐ。
以降は前日と同じく、天候待ちを繰り返しながら、徐々に高度を稼ぐ。
風の収まったときに急な雪原に取り付いている最中に、強風と強い雨が一時的にありヒヤリとするが、雨はすぐ収まったので体が濡れて冷えることは無かった。
11:35 コル(詳細不明)に到達。南峰と北峰の間。
ナイフリッジを通過した。上部は完全に鋭角な三角形をしていたため、ガイドが頂点の左右に踏み跡を付け、約30mロープを張る。
始点はハイマツ、終点はピッケルでロープを確保する。
全般的に岩が脆く、身体の確保の支点は小さなハイマツのみで、岩は殆ど浮き石であった。
崖際を通過する場所が多く、今にも崩れそうで大変な緊張感を味わった。
13:00 北峰(通常の山頂)に到達。ビバーク地点からの約2km弱を7時間26分かけて通過したことになる。
ガイドが旅館に、5時半頃着予定と電話を入れる。暫く休憩して下山を開始する。
本日、水は1リットル携帯していたが、残り少なくなったので、Tさんから少し分けて貰う。
利尻山避難小屋でハーネスを外し、休憩する。
途中でアイヌネギを採取する。
約850m付近から沢を下り、沢と登山路の交点で登山路に戻る。
甘露泉で水を補給する。1リットル飲む。
山行中は全く登山者に会わなかった。ただし、同時期にガイド・T氏の知人2名が山に入っていた。
17:20 キャンプ場に到着。ハイヤーを呼ぶ。
宿泊先 グリーンウインド(ペンション) 綺麗で、食事が大変良かった。
食事後、送迎付きで近くの利尻富士温泉に入った。
5月21日
旅館〜鴛泊〜稚内〜日本海側〜石狩沼田〜深川〜札幌
降雨のため、マンションまで送っていただいた。
(その他)
Tさんは私より経験が多く、ビレイは彼女が行った。私は、全行程を2番手で歩いた。
難所の通過でザックを押してもらったり、藪こぎ時にザックの引っかかりを外してもらったりと、大変お世話になった。
今回の山行参加へのきっかけは、Tさんがガイドに利尻山東陵の登攀を強く希望し、1名の参加では費用的に高くなるため、ガイドから私に参加の打診があったものである。
(鬼脇ルートについて)
崩落が激しいため7合目以上は登山禁止になっているが、登山者が少ないためか登山路に藪が被り、雪面歩行以外は藪こぎの連続であった。
通常の登山路の2〜3倍の労力を要したので、体力的にもかなりハードであった。
また、登山路は全般的に脆く、特に崖の際を通過する上部は大変危険であった。
ガイドの技術と判断力には脱帽。2日目にビバークした時点では、天候から考えて登頂は無理と考えていたが、極地法と云いながらジワジワ高度を稼ぐ方法は大変参考になった。
コル到着以降はエスケープルートは無いので、通過できるとの確信は豊富な経験に基づいているものと思われる。
自分自身としては、ビバーク地点以降は度胸を据えて、気後れすることがないように努めた。
また、きつい斜面の登りでは、完全に息があがる前に立ち止まって一息入れ、疲労からくるミスを起こさないように留意した。
上部は、落ちたら助からない斜面と稜線の連続であった。
GPS軌跡
カシミール3D使用
山旅クラブの地図使用
同上
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